「View と State を分離する」は Compose 時代でも重要なのか?

Jetpack Compose が普及した今でも、「View と State を分離することは重要ですか?」という質問をよく見かけます。

結論から言うと、重要ではあるものの、設計の中心ではなくなりました。

Compose が登場したことで、私たちが考えるべきことは「View と State を分離すること」から、「State をどこに持つべきか」へと変わっています。

 

🤔 XML 時代は「View と State の分離」が重要だった

従来の Android View システムでは、View は変更可能なオブジェクトでした。

画面を更新するたびに、

- setText()
- setVisibility()
- notifyDataSetChanged()

のような API を呼び出して View を直接変更します。


State
   │
ViewModel
   │
View(XML)

View が多くの状態を抱えていたため、UI の更新処理とビジネスロジックを分離することが、保守性を高めるために非常に重要でした。

 

🤔 Compose は View 自体が状態を持たない

Compose では UI は関数です。


@Composable
fun UserScreen(state: UserState) {
    Text(state.name)
}

state が変われば、Compose が自動的に再コンポーズし、UI を描き直します。

開発者が View を直接更新することはほとんどありません。

つまり、


 State
   │
Composable
   │
  UI

という流れになり、「View をどう更新するか」を意識する場面は大幅に減りました。

その結果、「View と State を分離すること」自体の重要性は相対的に小さくなっています。

 

🤔 公式ドキュメントが強調しているのは State Hoisting

Compose の公式ドキュメントを見ると、「View と State の分離」ではなく State Hoisting が中心テーマになっています。

最初に紹介される原則がこちらです。

State は、それを利用する場所のできるだけ近くに置くべき

これは XML 時代の

「まず ViewModel に置こう」

という発想とは少し異なります。

例えば、1つの Composable だけが利用する状態なら、


var expanded by rememberSaveable {
    mutableStateOf(false)
}

のように Composable の中で保持することが推奨されています。

公式ドキュメントでも、

Keeping UI element state internal to composable functions is acceptable.

と明記されています。

 

🤔 ViewModel は「すべての State の置き場所」ではない

Compose の公式ドキュメントには、さらに興味深い説明があります。

The lowest common ancestor can also be outside of the Composition. For example, when hoisting state in a ViewModel because business logic is involved.

ここで重要なのは、

「ビジネスロジックが関係するから ViewModel に置く」

と説明していることです。

「画面の State はすべて ViewModel に置く」とは書かれていません。

さらに、公式は ViewModel を次のようにも説明しています。

A ViewModel is just an implementation detail of a state holder with certain responsibilities.

つまり ViewModel は、

State Holder の実装方法の一つ

という位置付けです。

もちろん、ViewModel は今でも重要なコンポーネントです。

しかし、Compose の世界では「唯一の State Holder」ではありません。

 

🤔 Compose では「State の寿命」を考える

Compose では State の種類ごとに、適切な置き場所があります。


UIだけで使うState
      │
  remember
      │
rememberSaveable
      │
 Navigation
      │
 ViewModel
      │
 Repository

それぞれ保持できる期間が異なります。

- remember は再コンポーズまで
- rememberSaveable は Configuration Changes や Process Death 後まで
- Navigation は画面遷移に関する状態
- ViewModel は画面のライフサイクルとビジネスロジック
- Repository はアプリ全体のデータ

Compose では、

「この State は ViewModel に置くべきか?」

ではなく、

「この State はどのくらい生き続けるべきか?」

という視点で考える方が自然です。

 

🤔 まとめ

Compose によって、「View と State を分離する」という考え方が間違いになったわけではありません。

ただし、Compose は UI 自体が宣言的になったため、その問題は以前ほど大きくなくなりました。

現在の Android アーキテクチャで重要なのは、

「State をどこに配置するか」

そして

「その State をどのライフサイクルまで保持するか」

です。

実際、Compose の公式ドキュメントも「View と State の分離」ではなく、「State Hoisting」や「State Ownership」を中心に説明しています。

ViewModel を使うことが目的ではなく、State に最適な寿命と責務を与えることが、Compose 時代の設計と言えるでしょう。

 

🤔 参考


Navigation 3 時代でも ViewModel は State Holder であるべきか?

Compose と Navigation 3 が変えた ViewModel の役割

長年、Android 開発では一つの考え方が当たり前とされてきました。

画面の状態(State)は ViewModel に持たせる。

これは単なるベストプラクティスではなく、Android アーキテクチャの基本原則の一つでした。

ViewModel は Configuration Changes(画面回転など)でも破棄されず、さらに SavedStateHandle を使えば Process Death 後の状態復元もできます。

そのおかげで Activity や Fragment は UI を表示することに専念でき、画面の状態はすべて ViewModel が管理する、という設計が一般的になりました。

しかしここ数年で、この考え方は少しずつ変わり始めています。

Compose も Navigation 3 も ViewModel を不要にしたわけではありません。

代わりに、それぞれが 「本来その State を持つべき場所」 を用意するようになりました。

そこで、こんな疑問が生まれます。

Navigation 3 の時代でも、ViewModel は State Holder であるべきなのでしょうか?

 

🤔 以前の ViewModel は画面の State をすべて抱えていた

Compose が登場する以前は、多くの ViewModel が画面に関するほぼすべての状態を保持していました。


ViewModel
├── UI State
│   ├── text
│   ├── scrollPosition
│   ├── selectedTab
│   └── dialogState
│
├── Navigation State
│   └── screen arguments
│
└── Presentation Logic

この構成には多くのメリットがありました。

- Configuration Changes に強い
- Process Death 後も状態を復元できる
- Activity / Fragment をシンプルに保てる
- UI とビジネスロジックを分離できる

そのため、新しい State が増えたら、

とりあえず ViewModel に置く

という設計が自然になっていました。

 

🤔 Compose は UI State を UI に戻した

Jetpack Compose は、この考え方を少し変えました。

すべての UI State を ViewModel に持たせる必要はなく、Composable 自身が State を持てるようになったのです。

例えば検索文字列なら、


var query by remember {
    mutableStateOf("")
}

だけで十分です。

さらに Configuration Changes や Process Death を越えて保持したいなら、


var query by rememberSaveable {
    mutableStateOf("")
}

を使えます。

例えば次のような State は、

- TextField の入力内容
- 選択中のタブ
- 展開状態
- ダイアログの表示状態
- スクロール位置

どれも 純粋な UI State です。

ビジネスロジックではありません。

そのため、実際に使っている Composable の中に置く方が責務も分かりやすくなります。

Compose はまず、

「UI State は UI が持つ」

という考え方を広めました。

 

🤔 Navigation 3 はさらに一歩進めた

Navigation 3 は、この流れをさらに推し進めています。

まず、画面引数を SavedStateHandle 経由で受け渡す必要がなくなりました。

各画面は自分専用の NavKey を持ちます。


data class UserDetail(
    val userId: Long
) : NavKey

さらに Navigation 3 では rememberSerializable が追加されました。

rememberSaveable が Android の保存・復元機構を利用するのに対し、

rememberSerializableNavEntry 単位 で UI State を保持します。

つまり、UI State は Navigation の Back Stack と一緒に移動するようになります。

画面ごとの State を ViewModel に保存する必要はなく、

各画面自身が UI State を持つ

という構造になります。

役割を整理すると次のようになります。


UI State
    │
rememberSerializable
    │
Composable


Navigation State
    │
NavKey


Presentation Logic
    │
ViewModel

UI State は UI のもの。

Navigation State は Navigation のもの。

どちらも、もう ViewModel が管理すべき State ではありません。

 

🤔 では ViewModel には何が残るのか?

UI State も Navigation State も ViewModel の役割ではなくなったとしたら、

ViewModel は何を担当するのでしょうか?

実は、やることはまだたくさんあります。


ViewModel
├── Repository の調整
├── ビジネスロジック
├── Flow の変換
├── Paging
├── Retry
└── viewModelScope

ここで面白いことがあります。

この中には、

State そのものはほとんどありません。

あるのは責務です。

ViewModel は

- Repository からデータを取得し
- ユーザー操作に応答し
- ビジネスロジックを実行し
- UI が描画しやすい形へ加工する

という役割を担います。

 

🤔 ViewModel は「State Holder」ではなく「State Producer」へ

例えば次のような ViewModel を考えてみます。


val uiState = combine(
    userRepository.users,
    settingsRepository.settings
) { users, settings ->
    HomeUiState(
        users = users,
        darkMode = settings.darkMode
    )
}.stateIn(...)

ここで実際の State はどこにあるでしょうか。

ViewModel ではありません。

データの正しい管理場所(Single Source of Truth)は Repository にあります。

ViewModel は、それらを UI 用に変換しているだけです。

つまり ViewModel は

State を保持する存在ではなく、State を生成する存在

になりつつあります。

一見小さな違いに思えますが、

Presentation Layer の考え方を大きく変える変化です。

 

🤔 State を持つ責任は、それぞれのレイヤーへ

Compose より前は、


ViewModel
├── UI State
├── Navigation State
└── Presentation Logic

という構成が一般的でした。

Navigation 3 では、


rememberSerializable
└── UI State

NavKey
└── Navigation State

ViewModel
└── Presentation Logic

へと役割が整理されます。

Compose は UI State を UI に戻しました。

Navigation 3 は Navigation State を NavKey に任せ、

UI State を NavEntry ごとに保持できるようにしました。

ViewModel が不要になったわけではありません。

責務がより明確になった のです。

 

🤔 よりシンプルなアーキテクチャ

その結果、アーキテクチャは次のように整理できます。


+----------------------+
|      Composable      |
|----------------------|
| UI State             |
| rememberSerializable |
+----------+-----------+
           |
           v
+----------------------+
|      ViewModel       |
|----------------------|
| Presentation Logic   |
| Flow Transformation  |
| Repository Calls     |
+----------+-----------+
           |
           v
+----------------------+
|      Repository      |
|----------------------|
| Persistent Data      |
| DataStore / Database |
+----------------------+

各レイヤーが、それぞれ最も適した責務を持ちます。

- Composable は UI State
- NavKey は Navigation State
- Repository は永続データ
- ViewModel は Presentation Logic

責務が自然に分離された構造です。

 

🧑🏻‍💻 まとめ

Navigation 3 が登場しても、ViewModel が不要になるわけではありません。

ViewModel はこれまでどおり、

- ビジネスロジック
- Repository の調整
- Flow の変換
- Paging
- 長時間動作する Coroutine

などを担当する最適な場所です。

一方で、Compose は rememberSaveable を導入し、UI State を UI に持たせやすくしました。

さらに Navigation 3 は rememberSerializable を追加し、UI State を NavEntry ごとに保持できるようにしました。また、Navigation State は NavKey が担当します。

その結果、「とりあえず ViewModel に State を置く」という設計は、必ずしも最適ではなくなりました。

これからは、

この State を ViewModel に保存するにはどうすればいいか?

ではなく、

そもそも、この State は ViewModel が持つべきものなのか?

と考える方が自然でしょう。

ViewModel は今でも欠かせない存在です。

しかし Navigation 3 の時代における主な役割は、State Holder ではなく Presentation Logic を担うことへと変化しつつあります。

なお、UI State を ViewModel の外へ移したからといって、Configuration Changes や Process Death に弱くなるわけではありません。

- UI State は rememberSaveablerememberSerializable
- Navigation State は NavKey
- 永続データは Repository

というように、それぞれのレイヤーが適切な仕組みを使えば、Configuration Changes と Process Death の両方に対応した堅牢なアプリケーションを構築できます。

重要なのは State を保存することではなく、

「その State を最も自然に所有すべきレイヤーが管理すること」なのです。

 

🧑🏻‍💻 参考


Navigation 3 の Navigation Graph パターンまとめ

 

🤔 Navigation Graph はもう navigation() だけじゃない

Jetpack Compose 向けの Navigation 3 では、従来の Navigation Component にあった navigation() を使ったネストした Navigation Graph の考え方がなくなりました。

その代わりに、「コードをどう整理するか」と「BackStack をどう分けるか」を分離して考える設計になっています。

この記事では、Navigation 3 でよく使われる 3 つの Navigation Graph パターンを紹介します。

 

🤔 Navigation 3 の3つのパターン


Navigation 3
│
├─ コードを整理したい
│   ├─ Extension Functions
│   └─ Sealed NavKeys
│
└─ BackStack を分けたい
    └─ Nested NavDisplay

ポイントは、

- コードを整理する方法
- BackStack を分離する方法

は別の話だということです。

 

🤔 Extension Functions で画面を機能ごとに分割する

Navigation 3 では entry() を並べて画面を登録します。

画面数が増えてくると、1つのファイルに全部書くのは見づらくなります。

そんなときは Extension Function へ切り出すのが最もシンプルです。


// AuthModule.kt
fun EntryProviderScope<NavKey>.authGraph() {
    entry<Login> {
        LoginScreen()
    }

    entry<SignUp> {
        SignUpScreen()
    }
}

メイン側では呼び出すだけです。


val entryProvider = entryProvider {
    authGraph()

    entry<Home> {
        HomeScreen()
    }
}

NavDisplay(
    backStack = backStack,
    entryProvider = entryProvider
)

これだけで認証画面を別ファイルへ分離できます。

メリット
- Feature 単位で管理できる
- モジュール分割しやすい
- BackStack は1つなので構成はシンプル

 

🤔 Sealed NavKey で画面をグループ化する

もう1つの整理方法が NavKey をグループ化する 方法です。


sealed interface AuthKey : NavKey {

    @Serializable
    data object Login : AuthKey

    @Serializable
    data object SignUp : AuthKey
}

sealed interface MainKey : NavKey {

    @Serializable
    data object Home : MainKey

    @Serializable
    data class Detail(
        val id: String
    ) : MainKey
}

画面遷移も名前空間付きで分かりやすくなります。

Navigation 3 では Graph は存在しませんが、

- Auth 系
- Main 系
- Settings 系

のように論理的に整理できます。

メリット
- 名前空間が分かりやすい
- 型安全
- Destination が探しやすい

 

🤔 NavDisplay をネストする

ここだけは少し意味が変わります。

これはコード整理ではなく BackStack を分離する方法です。

例えば

- Bottom Navigation
- タブ
- Onboarding
- 独立したフロー

では、それぞれ独自の履歴を持たせたいことがあります。

その場合は NavDisplay をネストします。


entry<MainTabs> {
    MainTabsScreen()
}


@Composable
fun MainTabsScreen() {

    val tabBackStack =
        rememberNavBackStack(HomeTab)

    NavDisplay(
        backStack = tabBackStack,
        entryProvider = entryProvider {

            entry<HomeTab> {
                HomeScreen()
            }

            entry<SearchTab> {
                SearchScreen()
            }

            entry<ProfileTab> {
                ProfileScreen()
            }
        }
    )
}

ここでは親とは別の NavBackStack を持っています。


Root 
NavDisplay
    │
    └── MainTabs
             │
             └── NavDisplay
                     │
                     ├── Home
                     ├── Search
                     └── Profile

つまり、

NavDisplay = NavBackStack の管理単位

という考え方になります。

Bottom Navigation で各タブの履歴を保持できるのも、この仕組みによるものです。

 

🤔 どれを選べばいい?

次のように考えると分かりやすいでしょう。


画面を整理したい?
│
├─ Yes
│   ├─ Extension Functions
│   └─ Sealed NavKeys
│
└─ BackStack を分けたい?
    └─ Nested NavDisplay

 

🤔 まとめ

Navigation 3 では、従来の navigation() による Graph のネストはありません。

その代わりに、

- Extension Functions で entry() を機能ごとに分割する
- Sealed NavKey で Destination を整理する
- Nested NavDisplay で独立した NavBackStack を持つ

という3つのパターンを組み合わせて設計します。

特に重要なのは、コードの整理と BackStack の分離は別の概念という点です。

Navigation 3 は Graph をネストするライブラリではなく、NavDisplay と NavBackStack を組み合わせてナビゲーション構造を組み立てるライブラリへと進化しています。

 

🤔 参考


Navigation 3 時代の「二重遷移」を防ぐ正しい方法 - dropUnlessResumed は debounce ではない

Android アプリでボタンを素早く連打すると、同じ画面が何度も積み重なってしまうことがあります。


Home
  ↓
Detail
  ↓
Detail
  ↓
Detail

この問題を防ぐために debouncethrottle を使うケースは少なくありません。

しかし、Navigation 3 が提供する dropUnlessResumed は考え方がまったく異なります。

これは「一定時間タップを無視する」のではなく、画面が遷移できる状態かどうかを見てイベントを受け付ける API です。

 

🤔 debounce との違い

一見すると似ていますが、見ているものが違います。

つまり、


debounce
    ↓
「まだ500ms経ってないから無視」

dropUnlessResumed
    ↓
「この画面はもう操作できないから無視」

という違いがあります。

 

🤔 Navigationでは「時間」より「状態」が重要

画面遷移が始まると、現在の画面はすぐに RESUMED ではなくなります。


RESUMED
    │
ボタン押下
    │
navigate()
    │
STARTED
    │
STOPPED

この間にもう一度クリックされても、


dropUnlessResumed {
    navController.navigate(...)
}

であれば実行されません。

つまり、


クリック1回目
    ↓
navigate()

クリック2回目
    ↓
画面はもう RESUMED じゃない
    ↓
無視

となります。

 

🤔 なぜ debounce より自然なのか

例えば画面遷移アニメーションが長くなったとします。

debounce は

500ms待つ

という固定時間なので、

- アニメーションが300ms
- アニメーションが700ms

どちらにも最適とは限りません。

一方 dropUnlessResumed


画面が操作可能
      ↓
受け付ける

画面遷移中
      ↓
受け付けない

戻ってきた
      ↓
再び受け付ける

と、Lifecycle に合わせて自動的に動作します。

 

🤔 内部では何をしているの?

実装は驚くほどシンプルです。

概念的には次のような処理です。


if (lifecycle.currentState == Lifecycle.State.RESUMED) {
    block()
}

つまり、

- 現在の Lifecycle を確認する
- RESUMED のときだけラムダを実行する

それだけです。

タイマーも、Coroutine も、待ち時間もありません。

 

🤔 Navigation 3 での使い方

Compose ではクリックイベントをそのまま包むだけです。


val onClick = dropUnlessResumed {
    navController.navigate(Detail)
}

Button(
    onClick = onClick
) {
    Text("Open")
}

これだけで、

- 二重 Push
- 二重画面生成
- 連打による BackStack の重複

を簡単に防げます。

 

🤔 debounce を使うべき場面

もちろん debounce が不要になったわけではありません。

例えば

- 検索ボックス
- API リクエスト
- テキスト入力
- リアルタイム検索

のように「連続イベントを間引く」目的なら debounce が適しています。

一方、

- Navigation
- Dialog を開く
- BottomSheet を表示する

など Lifecycle に依存する UI 操作では dropUnlessResumed の方が自然です。

 

🤔 まとめ

dropUnlessResumeddebounce の代替ではありません。

見る対象が時間ではなく Lifecycle だからです。

Navigation では「今この画面は操作可能か」が最も重要になります。

そのため Navigation 3 では、時間ベースの制御ではなく Lifecycle ベースの制御で二重遷移を防ぐ設計になっています。

一度仕組みを理解すると、「なぜ Navigation 用に専用 API が用意されているのか」がよく分かるはずです。

 

🤔 参考


Kotlin by JetBrains「Jake Wharton | KotlinConfersations'26」の文字起こし

Android開発やKotlinコミュニティのキーパーソンであるジェイク・ウォートン(Jake Wharton)氏へのインタビューです。

 

🤔 1. 自己紹介とKotlinとの歩み [00:26]

経歴:
長年Androidデベロッパーとして活動。Square(現Block)、Cash Appを経て、現在はSkylightに在籍。

Kotlinとの出会い:
Square時代、Java 7の機能不足やGoogleのツール進化の遅さに悩んでいた「プレ1.0(正式リリース前)」の頃にKotlinに注目。社内向けに導入提案書(プロポーザル)を作成。

反響:
その提案書を公開したところコミュニティで大きな話題となり、SquareでのKotlin導入だけでなく、エコシステム全体の盛り上がりに繋がった。

 

🤔 2. AndroidにおけるKotlinとコミュニティの力 [01:50]

Googleでの活動:
一時期Googleに籍を置き、AndroidにおけるKotlinの公式サポート(KTXライブラリなどの立ち上げ)を支援。

エコシステムの進化:
KTXライブラリのコード自体は現在通常のライブラリに統合されて役目を終えたが、それは言語が成熟した良い証拠であると語る。

Apple(Swift)とのアプローチの違い:
iOSのSwiftがAppleという中央集権からトップダウンで提供されたのに対し、AndroidにおけるKotlinは「草の根(グラスルーツ)的なコミュニティの熱意」から始まり、最終的にGoogleが公式サポートせざるを得ない流れを作った点がユニークである。

非Androidへの広がり:
「KotlinはGoogle製でも、Android専用でもない」という点が、15年経った今ではAndroid以外の開発者にも広く認知されるようになった。

 

🤔 3. Kotlin Multiplatform (KMP) の挑戦 [05:35]

これまでのクロスプラットフォーム:
過去のXamarinやPhoneGap、現代のReact NativeやFlutterなどを評価した上で、Cash App時代にKotlin Multiplatform(KMP)とCompose Multiplatformを選択。

アプローチの特徴:
UI層はiOSならUIKit/SwiftUI、WebならHTML DOM、AndroidならCompose UIといった「各プラットフォーム独自のネイティブビュー」を尊重し、バックエンドのビジネスロジックやプレゼンターロジックのみを共通化(シェア)する方針をとった。

KMPの強み:
他のクロスプラットフォーム言語と異なり、WebならJavaScript、iOSならネイティブコード、AndroidならJavaバイトコードと、ターゲットごとに最適な形へコンパイルされるため、メモリ空間の競合や相互運用の壁(Interop layer)が少ない。

エコシステムへの貢献:
5年前に始めた当時はJetBrainsのComposeも初期段階だったため、自分たちで足りないターゲットを作るなどしてエコシステムを強力にプッシュした。

 

🤔 4. オープンソース(OSS)の重要性 [10:53]

キャリアへの影響:
オープンソースに貢献することで、自身のスキルアップだけでなく、新しい人との出会いや転職の機会など、キャリアの節目で何度も救われた。

企業とOSSの関係:
REST APIとの通信や画像読み込み、依存関係の解決(DI)など、どのアプリでも共通する「ビジネスの知的財産(IP)ではない部分」のコードはオープンにすべき。結果的に会社の採用活動(「OSSを見て応募した」という優秀な人材の獲得)など、数字に表れにくい大きなリターン(無形の資産)をもたらす。

 

🤔 5. 生成AI(LLM)とライブラリの未来 [15:11]

「AIがコード生成できるならライブラリ投資は不要か?」という問いへの持論:
「コードを書くこと(Writing code)」自体は、ソフトウェア開発において決して最も難しい部分ではない。AIは既存のスキルを加速させる(アクセラレーター)ツールとして使うべきであり、それなしではコードが書けないような依存の仕方はリスクがある(将来的なコスト高騰も含めて)。

コードは書かれる回数より、読まれる回数の方が10倍多い(Code is read 10 times more than it's written)。 要件は常に変わるため、全体を俯瞰して理解できるコード設計が重要。

ライブラリの役割:
ライブラリの真の価値は「再利用可能なコードの境界線(デリミテーション)」を明確に引き、人間の認知負荷を下げることにある。パレートの法則のように「80〜85%の共通ユースケース」を綺麗にカプセル化することが大切。人間にとって直感的で優れた設計は、言語モデル(AI)にとっても扱いやすいはずである。

 

🤔 6. 2026年現在のKotlinへの期待 [22:45]

K2コンパイラの恩恵:
長年開発が続けられてきた「K2コンパイラ」への移行(大きな山場)を乗り越えたことで、言語自体の進化スピードが再び加速している。

注目している新機能:
Rich Errors(エラー処理の改善)プロポーザルの刷新
未使用の戻り値チェッカー(Unused return value checker)
when 式のデフォルト網羅性(Exhaustive when by default)

現在の心境:
K2の開発に全力を注いでいた停滞期を抜け出し、標準ライブラリ(datetimeやco-routinesなど)や言語プロポーザルが活発に進化している今の状況は、初期のKotlinのワクワク感を思い出させる。

 

🤔 7. コミュニティへの参加に気後れしている人へのアドバイス [27:30]

提案書(KEEP)の難しさ:
KEEP(Kotlin Evolution and Enhancement Process)はコンパイラの構文解析や各プラットフォームのバイトコードまで考慮しなければならず、内容が非常に高度で圧倒されるのは当然。

おすすめの関わり方:
Kotlin公式Slack(Kotlinlang Slack)にある language-proposal や language-evolution チャンネルを覗いてみるのがおすすめ。そこでは、より人間的で身近な困りごとや質問が、消化しやすい形で活発に議論されている。