AIが書いたコードは静かにアプリを壊す — “動く”ことに満足した開発の行き着く先 —

 

🧑🏻‍💻 1. 「動くコード」を生み出すAIの魔法と、その落とし穴

最近の開発現場では、「AIにコードを書かせる」のが当たり前になってきた。
ChatGPTやGitHub Copilotに「○○を実装して」と伝えれば、数秒で動くコードを出してくれる。
それをコピーして貼り付ければ、ビルドも通り、アプリも動く。
——まるで魔法のようだ。

けれど、実はこの“動くコード”こそがアプリを静かに壊していく。
なぜなら、そのコードは「なぜ動くのか」を誰も理解していないからだ。
AIは文脈を「設計思想」ではなく「統計的パターン」で捉える。
だから動作優先で、構造や責務を無視したコードを出すことがある。

その結果、「とりあえず動いたからOK」というコードが少しずつ積み上がる。
数カ月後、いざ修正しようとしたとき、
「この処理、誰がどうしてこう書いたんだっけ?」
——誰も答えられない。
そんな“ブラックボックス化”が静かに進んでいく。

 

🧑🏻‍💻 2. 小さな歪みが積もって、アプリの寿命を縮める

AIが生成するコードは、局所的には正しい。
しかし全体で見れば、設計のバランスを壊していることが多い。

たとえばMVVM構造のアプリで、AIが「便利なショートカット」としてUI層から直接データベースにアクセスするようなコードを出す。
確かに動く。けれど、これは明確に“構造違反”だ。
一見問題ないように見えても、
こうした「小さな歪み」が何十箇所も積み重なると、アプリは急速に脆くなる。

特にAIは“最短距離”で解決しようとする。
テストやエラーハンドリングは省かれ、
依存ライブラリも無自覚に増える。
それでも最初は動くため、気づかない。
だが、ある日突然ビルドが通らなくなったり、
AndroidやiOSのバージョン更新で全体が壊れたりする。

原因を追っても、「どこから手をつければいいのか」が分からない。
AIが生み出した“つぎはぎ構造”が、まるで崩れかけた積み木のように、
どこを直しても全体がぐらつく。
——それが「AIがアプリの寿命を縮める」という現象の正体だ。

 

🧑🏻‍💻 3. AIと共存するために、設計を“守る人間”が必要になる

AIを完全に排除することは現実的ではない。
むしろ、うまく使えば開発効率は飛躍的に上がる。
問題は、「AIに書かせたあとをどう扱うか」だ。

たとえば、AIに出させたコードは必ずレビューする。
一人開発でも“レビュー時間”を意識的に取る。
「動くかどうか」ではなく、「構造的に正しいか」を基準に見る。
さらに、AIへの指示(プロンプト)も工夫する。
「なぜこの方法なのか」「設計上のリスクは?」と質問を加えるだけで、
AIの出力品質は大きく変わる。

AIはあくまで“補助輪”だ。
自転車を前に進ませることはできても、
どの道を走るべきかまでは決めてくれない。

これからのエンジニアは、
AIを“使う人”ではなく“指揮する人”になる必要がある。
AIの力で速く動く一方で、
人間が「構造を守るブレーキ役」を担う。
そのバランスこそが、アプリを長生きさせる秘訣だ。

 

🧑🏻‍💻 まとめ:AIは便利な酸素、でも吸いすぎると毒になる

AIは開発のスピードを何倍にも引き上げる。
しかし、構造を無視したまま使えば、
そのスピードでアプリの寿命を削り取る。

“動く”ことだけをゴールにしてしまうと、
“生き続ける”ための土台が壊れていく。

AIが生み出すコードは、確かに速く、便利で、魅力的だ。
でも、それを理解し、守り、磨き続けるのは人間の役割だ。
アプリの未来は、AIの性能ではなく、
それを正しく使う開発者の構造への愛情にかかっている。


Kotlin・KSP・Compose Compiler を安全に更新する Renovate 設定術(developブランチ運用編)

Jetpack Compose Compiler が Kotlin に強く依存していた時代を経て、
今では少しずつ依存関係が緩やかになってきました。
それでも Kotlin・KSP・Compose Compiler の3つは依然として密接に関係しており、
バージョンのズレひとつでビルドが崩壊するリスクがあります。

この記事では、develop ブランチをメインに運用しつつ、
それらを安全かつ一貫性を保って更新するための Renovate 設定を紹介します。

 

🧩 Kotlin・KSP・Compose Compiler の三位一体更新

Compose Compiler は Kotlin コンパイラと深く結びついて動作するため、
Kotlin のメジャーアップデートが入ると、それに対応した Compose Compiler が必要になります。

さらに、KSP(Kotlin Symbol Processing)も Kotlin バージョンに追随するため、
この3つは基本的に「セットで更新する」のが鉄則です。


{
  "$schema": "https://docs.renovatebot.com/renovate-schema.json",
  "extends": ["config:base"],
  "baseBranches": ["develop"],
  "packageRules": [
    {
      "groupName": "Kotlin, KSP and Compose Compiler",
      "groupSlug": "kotlin",
      "matchPackagePrefixes": [
        "com.google.devtools.ksp",
        "org.jetbrains.compose.compiler"
      ],
      "matchPackagePatterns": [
        "org.jetbrains.kotlin.*"
      ]
    },
    {
      "description": "Do not automerge without CI",
      "matchUpdateTypes": ["minor", "patch", "digest"],
      "automerge": false
    }
  ]
}

 

⚙️ 設定の意図を読み解く

この設定は、単に自動更新を行うだけでなく、
Kotlin 界隈の依存を安全に、かつチームの開発フローに合わせて管理することを意識しています。


baseBranches: ["develop"]

Renovate のデフォルトは main や master に対して PR を作りますが、
実際の開発フローでは「開発用ブランチ(develop)」に更新を入れたいケースが多いですよね。

"baseBranches": ["develop"] を指定しておくことで、
更新 PR が常に develop ブランチに向けて作成されるようになります。

本番リリース前にテストや検証を挟める安全設計です。

 

🔗 groupName: 三つ巴のアップデートを1つにまとめる

groupName は、関連する依存をひとまとめにするためのグループ名。
ここでは "Kotlin, KSP and Compose Compiler" としており、
3つのパッケージを同時に1つの PR にまとめてくれます。


"matchPackagePrefixes": [
  "com.google.devtools.ksp",
  "org.jetbrains.compose.compiler"
],
"matchPackagePatterns": [
  "org.jetbrains.kotlin.*"
]

この指定で次のような依存が同時更新対象になります:


- Kotlin (org.jetbrains.kotlin)

- KSP (com.google.devtools.ksp)

- Compose Compiler (org.jetbrains.compose.compiler)

以前は androidx.compose.compiler でしたが、
現在の Compose Multiplatform では org.jetbrains.compose.compiler に移行しているため、この設定がより正確です。

 

🚫 automerge: false の哲学

Renovate には更新を自動マージする機能がありますが、
Kotlin 系の更新はそれに向きません。

理由は単純で、CI でのビルド確認が欠かせないからです。


{
  "description": "Do not automerge without CI",
  "matchUpdateTypes": ["minor", "patch", "digest"],
  "automerge": false
}

「CI による確認を通らない限り、自動マージさせない」というルールです。

特に Kotlin の minor アップデートでは内部 API が変わることもあり、
Compose Compiler や KSP が対応していない可能性があります。

PR を作成したあと CI を通し、問題なければ手動でマージする。

これが最も安全な流れです。

 

🧭 運用のヒントとまとめ

この設定は、いわば「Kotlin エコシステム用 Renovate セーフティモード」。

自動化の恩恵を受けつつも、壊れやすい依存を慎重に扱うための現実的な妥協点です。

項目 意図
baseBranches 更新PRをdevelop向けにして安全確認を確保
groupName Kotlin / KSP / Compose Compiler を同時に更新
automerge: false CI確認なしでの自動マージを防止
matchPackagePrefixes / matchPackagePatterns 最新の Compose 構成(Compose Multiplatform 等)に対応

 

🪶 まとめ:安全第一の Renovate 運用へ

Renovate は「ただの自動更新ボット」ではなく、
チームのアップデート戦略をコード化できるツールです。

Kotlin、KSP、Compose Compiler のような密接な関係を持つ依存こそ、
グルーピングとマージ制御で慎重に扱うべき対象。

develop ベースで CI を通すこの設定は、
自動化と安全性のバランスを取る最適解のひとつと言えます。

👉 Renovate Docs


【macOS】「Toggle Sticky Selection」を設定したい!

JetBrains系IDE(Android Studio、IntelliJ IDEA、PyCharm、WebStorm など)では、「Sticky Selection(固定選択)」という便利なモードがあります。これは、カーソルを移動するだけでテキスト選択を継続できるモードで、範囲選択を効率化できます。

通常は「Toggle Sticky Selection」にショートカットを割り当てて使いますが、デフォルトでは設定されていないため、手動でキーを割り当てる必要があります。たとえば、筆者は Control + Space に割り当てようとしました。しかし、ここで問題が発生しました。

 

🤔 Control + Space を設定しようとすると、IMEが切り替わってしまう

ショートカット設定画面で「Toggle Sticky Selection」に Control + Space を登録しようとすると、なぜか入力欄が反応せず、MacのIME(日本語入力)が英語に切り替わってしまいます。

つまり、IDEのエディタがそのキー入力をキャッチする前に、macOSのシステムが先に反応してしまっているのです。

これは macOS のデフォルト設定で、Control + Space は「入力ソースの切り替え」に使われているからです。Macで複数の言語(たとえば日本語と英語)を切り替えている人にはおなじみのショートカットですね。

このままでは、IDEエディタ側でショートカット登録ができません。そこで、macOS側の設定を変更する必要があります。

 

🤔 macOSのショートカット設定を変更して回避する

macOS のシステム環境設定から、ショートカットの競合を解消しましょう。


1.「システム設定」アプリを開く

2. サイドバーから 「キーボード」 を選択

3. 右側にある 「キーボードショートカット…」 をクリック

4. サイドメニューから 「入力ソース」 を選択

5. 「前の入力ソースを選択」 に割り当てられている ^ スペース(Control + Space) をクリック

表示されたチェックを外す、もしくは他のショートカットに変更

これで macOS 側が Control + Space を使わなくなるため、IDE側の設定画面で正しくこのキーを登録できるようになります。

 

🤔 無事にショートカット登録が可能に!あとは設定するだけ

macOS 側の干渉がなくなれば、IDE側の設定画面で Control + Space を「Toggle Sticky Selection」に自由に割り当てられるようになります。


1. IDE の「設定(Preferences)」を開く

2. Keymap(キーマップ) を選択

3. 検索バーに「Sticky Selection」と入力

4. 「Toggle Sticky Selection」を右クリック → Add Keyboard Shortcut

5. Control + Space を入力 → OK

設定後、エディタ上で Control + Space を押すと Sticky Selection モードに入り、矢印キーなどでカーソルを動かすたびに選択範囲が伸びていくことを確認できます。

 

🧑🏻‍💻 まとめ:macOSの干渉を避ければ自由にカスタムできる

Control + Space は便利なショートカットですが、macOS のデフォルト設定でIME切り替えに使われているため、IDEのエディタではそのままでは登録できません。

しかし、macOS の「キーボードショートカット」設定から「入力ソースの切り替え」を無効化または変更すれば、競合を回避できます。

この一手間を加えることで、自分の作業スタイルにあったショートカット環境が整います。エディタをもっと快適に使うためにも、こうした細かい調整はぜひ試してみてください 🎉